白夜行

第5話はかなり原作から手が加えられている。中でも大きく違うのは下記の2点か。

原作 TV
ゲームの仕事は松浦さんに頼まれた ゲームの仕事は松浦さんに内緒で始めた
松浦さんが雪穂に接触した記述はない 亮司と松浦が喧嘩、松浦が雪穂と接触

これ以外に、笹垣警部が雪穂・亮司周辺をかぎまわるスピードが原作よりもかなり速くなっているのも気になるけれど、テレビ的にはそうしておかないと武田鉄矢さんの出番が減りすぎるし、原作自体が、記述していないところは勝手に妄想してもいいようなスタンスで書かれているし。
原作では本当に何も書いていないから、亮司が無感情で黙々と雪穂の身辺整理をしているようにも受け取れてしまうけれど、TVドラマ版では、雪穂が完全に人間性を失っていて、むしろ裏社会で暮らす亮司の方が人としてまともな感情を持っているように描かれている。
雪穂の異常性についてはテレビ版第1話の幼少期のエピソードでも暗示されていた。それは亮司に「僕は死にましぇーん」ってやらせておびえる姿を見て喜ぶシーン。他にも第1話には2話以降につなげるためのネタが大量にちりばめられている。

  • タイムマシーンがあったら未来に行く?過去に行く?の問いに雪穂は未来、亮司は過去を選択。(過去にとらわれ続ける亮司を暗示)
  • 川面に映る月を雪穂が花に喩えてみせるシーン(雪穂=太陽に代わるもの=月)
  • 父親殺し事件発生日に雨が降っていたこと

これらはたぶんに脚本家の独自解釈が含まれている部分で、原作原理主義派には受け入れがたいものが多いと思うけれど、ドラマ全体を「雪穂=太陽に代わるもの=月」という構図で貫き、雪穂の内面を月の裏側に喩えて「月の裏側は真っ黒だった」と亮司が独白(ナレーション)したところは、テレビドラマ内で完結する演出としてはかなり良かった。

さて、原作では亮司が松浦さんをナニしたあと雪穂とどのようなやり取りがあったのかが最終章まで描かれず、しかも事実だけが淡々と描かれているのだが、そこの真相が次回の放送ではどう表現されるかが最大のみどころ。