日曜劇場「天国と地獄~サイコな2人~」は、ホワイダニットとして観る「べき」

2021/02/23時点で6話まで放送されている「天国と地獄~サイコな2人~」について書きたくなりました。

 

(註)入れ替わり後の人名表記はドラマ公式サイトに従います。

日髙<彩子>:外見は日髙、魂は彩子

彩子<日髙>:外見は彩子、魂は日髙

 

次々に新たな登場人物が出てきて、真犯人候補もどんどん入れ替わってしまうことから、ついていけない、フェアでないといった反応が出てきているような気がします。

しかしこのドラマはそもそも「主役二人の魂が入れ替わる」ストーリーである時点で伝統的な本格ミステリの建て付けにはなっていません。確かに超常現象をも前提条件に含んでいるものが最近は存在しますが、それでももしフーダニット作品であるならば、超常現象の発生条件にも、真犯人候補にも逸脱してはならない制約があり、その制約についてもストーリーに明記されているのが本格ミステリのセオリーです。

このドラマの場合、話数が進むにつれ、彩子<日髙>は本当に殺人鬼なのか?本当は違うのでは?と思わせる展開になっています。捜査一課(セク原チーム)の動きも、途中から犯人日髙のしっぽを掴もうとする行動ではなく事件全体を洗いなおす動きになっています。そのため捜査が進展するほど関係者が増えるのは当然の流れになっています。

 

以下、ネタバレあり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最新の第6話は、視聴者が「神の目(ただし真犯人や黒幕の部分はまだ見ることを禁じられている)」で新月の夜の出来事を俯瞰することができる展開になっています。彩子<日髙>は殺人鬼の次の標的となるであろう家を第5話の時点から偵察していましたが、清掃員を装って侵入経路を作り忍び込みました。しかし、殺害は行っておらず(ここのシーン描写は現実なのか日髙<彩子>の妄想なのかが曖昧にされていますが殺されてはいなかった)、「来なかった、なぜ来なかった」とつぶやいています。また、忍び込む前にも「今日は会えるだろうか」とつぶやいています。

 

なので、このドラマのテーマは、耳の形がどうこうといった画像解析による犯人当てではなく、なぜ彩子<日髙>はこんなことを繰り返しているのか? というWhy done itであるように思います。仮にWho done it? として見るにしても、現時点では明らかに推理に必要な材料すべてが提示された「読者への挑戦」が可能な状態にはありませんので、イライラするのは時期尚早かと思います。

 

 

以下は自分のための備忘録です。

 

「日髙陽斗」と名乗っている登場人物について。

化学屋

妹の日髙優菜、父の日髙満、コ・アース社員からは「日髙陽斗」として認識されている。

奄美大島のリピーター客からは「東朔也」として認識されている。

「日髙陽斗」が奄美に誰かとともに行ったことをコ・アースの五木樹里さんが覚えている(7話予告)。

秘められた過去がある(7話予告)。

 

彩子と体が入れ替わっても動揺せず「ラッキーですね」と呟き、「だからあなただったんですか」などともつぶやいている。他人の体を転々としないといけない宿命を背負っていると達観しているのか?

奄美大島に伝わるシアカナロの伝説を知っている

第1話の「番号2」の殺害現場には日髙の体を使って、第3話の「番号4」の殺害現場には彩子の体を使って出入りしているが。捜査の手を逃れ続けている。捕まるわけにはいかない理由がある。

「番号2」の人物を殺害した凶器を所持している。(証拠隠滅?)

暗闇の清掃人Φの漫画と殺人リストを持っている。

「3時に歩道橋で待っています」の謎の手紙を一連の犯行に関わるものとして隠している

「番号4」が歩道橋に書かれたときに「まだ終わりじゃなかったんですね」とつぶやき、さらにそのあと「次は何番なんですかね」とつぶやいていることから、どの順で殺害されるのかについては知らない立場にいると思われた。

しかし、次が「番号9」になることは歩道橋に番号が書かれるよりも前に特定を完了していた?

 

 

「日髙陽斗」を名乗る人物と殺害実行犯との関係について

(現在の)顔を知らない

あまり時間がない(久米正彦の家の庭に落ちていた薬を見て)

落ちていた薬の名前は現実には実在しないもの。

殺害実行犯が何らかの持病持ちであることを知っている?

久米正彦の家に忍び込む前に「今日は会えるだろうか」と呟いているので、番号2番号4の殺害現場では会えていなかったということか。

殺害実行犯の人物は久米正彦の家に向かったが張り込みされていたため侵入せず別の男性にターゲットを変更。口にものを詰め込み手のひらにΦと記入する様式は共通しているが床が清掃されていない。(床清掃は「日髙陽斗」と名乗る人物が行っていたのか)

 

 

「クウシュウゴウ」について その1

戸田一希から一ノ瀬(3年前のΦ事件の被害者)の個人情報を買った

戸田一希は「クウシュウゴウ」に会っていない

「クウシュウゴウ」の口座を開設したのは十和田元(actor 田口浩正)

十和田元は2018年11月頃に自殺?し3か月後に発見されている

十和田元の遺品整理は特殊清掃業者が担当

十和田元の遺品から「漫画」を持ち出したのは東朔也

 

 

「クウシュウゴウ」について その2

便利屋りっくん(渡辺陸)に数字を消す作業を3回依頼している

 

 

視聴者にまだ明かされていないもの

「日髙陽斗」を名乗る人物は過去にも誰か(東朔也?)と魂が入れ替わっているのか

「日髙陽斗」の過去

「日髙陽斗」を名乗る人物が前回奄美大島を「東朔也」の名前で訪れたのは何時か

ボストンのシリアルキラも新月の夜に犯行を行っていたのか

ボストンの事件と一ノ瀬殺害事件との連続性

一ノ瀬殺害事件と番号2以降の事件との連続性(なぜ3年空いているのか)

「彩子」の過去。なぜ彩子は奄美大島の海岸で丸い石で殴られる夢を見るのか。

なぜ「日髙陽斗を名乗る人物」が「彩子」と体が入れ替わるのか(満月と歩道橋がそろえば誰とでも入れ替われるというルールではおそらくない)。

歩道橋にカメラを仕掛けた人物は誰か

歩道橋に番号を書かせている人物は誰か、なぜ伝達方法が「歩道橋に番号を書くこと」なのか(実行犯がどこに誰の姿で存在しているかを指令者は知らない?)。

歩道橋の番号を消させている人物は誰か(名義は「クウシュウゴウ」)

手紙を書いた人物は誰か

漫画を描いた人物は誰か(十和田元?)

ミスターXは誰か

漫画通りのシリアルキラが遂行される理由(法で裁けない相手だから?)

 

 

妙な符合

彩子<日髙>が日髙<彩子>に「自殺してくれたほうが好都合」と言ったことと、十和田元が自殺?していることの符合

彩子<日髙>が日髙<彩子>に自分の持病を教えたことと、殺害実行犯が落としたかもしれない薬について彩子<日髙>が何かを知っていることの符合

 

 

その他気になる点

第6話の彩子<日髙>は詰めが非常に甘い

①陸に見つかってしまったことに気づいてから暗証番号式のロッカーに変更したのに相変わらず付箋を挟んでいる。探してくれと言っているようなものではないか?

②濃厚接触だからという理由だけで日髙<彩子>の行動を封じることができると本当に思ったのか?

③久米正彦の家から逃走する際に日髙<彩子>に見つかってしまったのに口封じをしていない

④日髙<彩子>が見張っていたから殺害実行犯が久米正彦の家に来なかったと考えずに東朔也の死亡届を検索しているのは何故?